心の書庫

主に本を通じて書いてゆく 書庫代わり 自分へのヒント

我にとらわれず なりゆきに任せる 森田正馬


小我のとらわれから脱せよ

神経質患者は、不眠や頭の重い感じ、不快な気分など、一つ一つの症状にたいし絶えず注意を向け、自ら予測しているために、その症状はますます悪くなるばかりである。それはあたかも子供が
植物を植えるとき、土に根を下したかしらんと思って毎日それを引き抜いてしらべるようなもので
一度植えたら、根を下すのも下さぬのも自然の成りゆきにまかせてこそ植物は生育するのである。神経質の症状も、その症状をなくしようとしていろんな療法をあさることをしないで、自然の成りゆきにまかせ、向上をもとめてやまぬあるがままの心で働いていさえすれば、いつの間にか消失するものである。

また神経質の人の特長として、「自分の症状は人には少しもわからないけれども、こんなに苦しいものはほかにない」と自ら信じ、人にも訴えることがある。しかしそれは、まったく本人の主観的な気分にすぎず、客観的なものではない。たとえば皮膚を針で刺してチクリと痛みを感じるのは絶対に自分だけであって、他人の身体を刺しても自分には何とも感じない。この主観の中に閉じこもり、人と自分とを正しく比較するだけの判断力を失ったのが、神経質の症状である。

 

メモ

 

神経症者の性格の偏りとして、思い込みやエゴが強い場合がある。自然体に振る舞えないとき、正反対の神経症的性格や症状が前景する。