心の書庫

主に本を通じて書いてゆく 書庫代わり 自分へのヒント

引き続き探偵について 夏目漱石

彼岸過迄』では、探偵は
二種類に分けられています。一つは、「其目的が既に罪悪の暴露にあるのだから、子じ
め人を陥れやうとする成心の上に打ち立てられた職業である」というタイプの探偵です。

敬太郎はそれを嫌うわけです。彼が考えている探偵というのは、「自分はたぶん冊の研究者否人間の異常なる機関が暗い闇夜に運転する有様を、驚嘆の念を以て眺めてみたい」というような探偵です。そういう探偵は犯人をとらえることに何の関心ももっていないわけです。柄谷行人


いわゆる「警視庁の探偵」と、「私立探偵」は違う、と言うこと。

私立探偵の系譜にエドガーアランポーのような、犯罪のメカニズムへの関心があると言う。いわゆる高等遊民というやつだ。(プー太郎)

ちなみに、探偵といっても、人の罪悪や目的、無意識を暴いて実証主義夏目漱石は、それを嫌う。

いわゆる実証主義的な探偵ではなく、本来的な知性 畏怖する感覚を持つ「知性」。それが探偵。

ホームズの推理は資本主義、イギリスの繁栄が犯罪により成り立つというのを暴く遡行的な推理。

一方、江戸川乱歩明智は遊民でしかない。変人ともいえる。好みは分かれるだろう。

漱石は、しかし、それが何によるのかをこの作品で分析しようとしていると思うのです。『彼岸過迄』という作品は、その意味で、非常に精神分析的な作品なんですね。先に、探偵 = 精神分析者と言いましたが、それがほとんど最終的な段階にまで行き着いていると思います。漱石は『彼岸過迄』を書くことで、自分は何に悩んでいるのかにある
程度気づいています。その苦悶が治らないとしても、それが何によるのかをはっきりさせたといえると思います。柄谷行人 彼岸過迄について



つまり、大事なのは、自然主義的なものと、想像的なものの二項対立の対置にみて、「物自体」のような考えを想定する。ラカンの「現実界」のこと。ことばになりようがないが、先見的なものを知る知性が、夏目漱石の探偵の素質なのだろう。